兜枢x士 債権者集会報告


平成22年10月6日に兜枢x士が債権者集会を行いました。当会からも委員を派遣いたしましたので、
その報告掲載いたします。

 武富士債権者集会(東京) 報告

平成22年10月6日(水)
会場:日本青年館
13時30分から15時まで

出席者
武富士;吉田純一代表取締役社長 佐藤しげお取締役、島村ヒサシゲ債権管理部次長
保全管理人;小畑英一弁護士、
保全管理人代理:6名
調査委員:須藤英章弁護士  調査委員代理人:3名
司会;柴田裕之弁護士(保全管理人代理)

1.代表取締役挨拶(吉田社長)
   申立に至る経緯、28日午前中取締役会決議、同日申立と同時に保全管理命令等が発令。
  申立について顧客、株主、社債債権者等に対する謝罪、保全管理人を中心に手
続きを進める。

2.小畑保全管理人説明
   手続きはDIP型に準じた手続きであるが、適正公正に進めるよう努める。
   現在2万件以上の訴訟がある混乱を避ける必要がある。
  20人の弁護士5人の公認会計士で遂行している。
  
調査命令も発令されているため更生手続き開始原因等は、須藤英章調査委員によって進められる。
  今後の進行のポイントは大きく3点といえる
    
@過払い債権者への告知
      Aスポンサー選定
    
B手続きの適正・公正の確保
   完済過払い債権者も多く、顕在化しているだけで11万3千名、1713億円ある。潜在的なもの
  は膨大である。現在利息制限法に従った引き直し計算中を継続している。27日に申立見込みの報
  道があったために申し立てが前倒しとなり、現在まで引き直しが完了していないが、開始決定まで
  に計算は確定させたい。自分が過払い債権者であることを認識させるために報道機関にも協力して
  もらう。債権届け出をしてもらうことが手続きの第1歩と考えている。
HP、弊社ATMやコールセ
  ンターでアナウンスを行う。出来る限りの告知をする。完済者もコールセンターへ顧客であったこ
  とを告げてほしい。スポンサー選定は、開始決定までには候補者の意向決定をしたいと考えてい
  る。適宜情報公開をする。手続きの適正の確保については、経営責任・破綻原因の調査は開始決定
  後、独立した第三者委員会の設置も選択肢の一つと考えている。

3.申立に至る経緯の説明
  配布資料(式次第)の読み上げ程度。

4.過払い金債権の取り扱いについて
  
更生債権の届け出をしてもらう必要がある。判決があったものも同様。全ての権利行使のスタート
  なのでお願いしたい。コールセンターへ届出書の発送依頼をしてほしい。送付先を届け出ることも
  できる。債権届け出期限は、4か月が平均となっているが開始決定によって裁判所が定める。営業
  貸付金については、日栄・商工ファンド対策弁護団の計算方法によって計算している。正確な金額
  の確定をする。訴訟は中断している。
具体的な計算方法は、過払債権者に有利なものである。5%
  利息、遅延があっても損害金を付加しない等。引き直し計算中であり、取引中の顧客については、
  計算終了後に武富士
ATMや店舗にてアナウンスする。

過去の完済者は、コールセンターに問い合わせてくれれば、開始決定後に債権届け出を発送する。今後は管財人の提出する更生計画案によって弁済率等がきまる。債権者に対する告知は継続していく。
 一般取引業者については、今後の支払い条件は、月2回の支払いを設定している。
 社債権者は個別に請求が必要、コールセンターで問い合わせを受け付ける。

5.質疑応答

@過払債権者代理人)小畑保全管理人が関与していたロプロの件を説明。弁済率3%や創業者の責任追及をしなかったことを踏まえ、支払う必要もなく返済を続けてきた過払金については、その他の債権(金融債権など)を区別して弁済をすべきではないか?武井家の経営責任を問うのか?

小畑保全管理人)ロプロについては結果だけで判断されるのは遺憾。全債権者の取引について引き直し計算し、個別通知+債権届出書を送っているので、全債権者に届け出をする機会を与え、公正を実現した。そのうえで、3%の弁済率となり、7月末に認可された。クレディアの民事再生では40%だったが、すべての債権者にその機会を与えたものではなく、弁済率の大小は、手続きの公正の点で関係ない。

銀行からの借入れはなく、社債・資産流動化・債権譲渡による資金調達のみである。武富士の債権者の大半が過払債権者及び社債権者であるため、これらの債権を他の債権者に優先させるのは、会社更生法の公平と公正な権利変更の趣旨から考えてむずかしいし、区別する理論的な根拠が見出せない。根拠を提示してもらえれば、検討はする。対立関係ではなく、協調した関係で事件処理にあたりたい。

創業者の責任追及については、大阪でも質疑あり。小畑保全管理人自身、ロプロのときと同じく更生申立てに関与しており、利害関係を有しているため適任ではない。今後、調査委員の調査、第三者機関(弁護士・公認会計士等)へ委嘱して判断することになると思われる。調査状況については今後適宜報告するので、財産の混同などの事実があれば情報提供または指摘して頂くことで、実効性のある経営責任の追及を行いたい。場合によっては債権者側から旧経営陣に対して、直接損害賠償請求を行っても良いのではないか。

 

A過払債権者代理人)潜在的過払債権者の取引について全件引き直し計算をし、完済案件も含めてすべてに個別通知をおくるべきであるが、どうすすめていくつもりか?

小畑保全管理人)原則として、知れたる債権者には更生手続開始決定書と共に、債権届出書を送るべきであることは認識している。しかしながら、消費者金融という性質上、プライバシーの問題もあり全件発送はできない。包括的禁止命令の発令をうけ、債務名義を取得している債権者等に対し、司法書士が代理についている場合も含め、すべて本人宛に通知を送ったところ、家族に知られたなどのクレームがコールセンターに寄せられた。全件発送を行うと、同様のクレームが殺到し円滑な更生手続に支障をきたす恐れが高い。全件発送を行うかどうかは更生開始決定までには判断するが、現段階では個別発送よりもHP、テレビCM、新聞広告などの媒体で、債権届け出を促す予定である。

 

B過払債権者代理人)グレーゾーン金利での貸付をしつづけてきたことについて経営責任を問うのか?また、過払債権者数や額は把握しているのか?

小畑保全管理人)その当時(平成18年以降)の経営者が今日出席していないので、なんとも言えない。当然、当時の経営者は刑事責任の追及の対象となると認識している。現在引き直し計算をしている最中であるため、その数や額は未定。

 

C過払債権者代理人)社債について、役員個人保証がついているものはどうするのか?

小畑保全管理人)役員個人保証がついた社債は発行されていない。

 

D過払債権者本人)訴訟提起し、武富士から答弁書・準備書面が送られ、分断が争われているが、どうなるのか?コールセンターに電話してもつながらない。

小畑保全管理人)更生債権に関する訴訟は中断する。まずは債権届出をして頂き、そのうえで分断・一連計算の可否を精査して認否をする。認否の結果、一連計算が認められない場合は、裁判が再開され債権額を争うことになる。認否で認められた場合はその金額で債権額が確定するため、訴訟も終結する。尚、何年の分断であれば一連の取引として認めるかについては、個別事例よって判断する。申立当時は50回線だったが、今週(10月4日以降)から300回線にした。ただし、現在もシステム障害のため、つながりにくい状況。今月中には対応できる体制を作る。

 

E過払債権者代理人)昨年末に武富士から武富士トラストへ債権譲渡し、その回収を武富士が管理しているが、今後も継続して行うのか?また、今後債権譲渡を否認することもあるのか?

小畑保全管理人)武富士トラストは、債権譲渡先のSPC会社であり、武富士とは別会社であるため関係ない。ただ、回収代行の委託を武富士が受けているので、委任関係にあり、それを今後継続していくかは検討する。否認については、更生管財人が行うものであり、債権の分類・債権の性質・譲渡金額などを調査し、詐害行為否認にあたれば更生開始決定後に否認されることもあると思われる。

 

F 過払債権者本人)本年4月、過払金を分割弁済する旨の和解して、初回の支払いが10月であった。このタイミングでの更生申立は、計画的に行われたのではないか? また債権者集会の案内などの通知も一切届いておらず、コールセンターに問い合わせてもきちんと対応してもらえなかった。

小畑保全管理人)今回の更生申立にあたっては、一部の役員・従業員・弁護士で秘密裏に準備を進めていたものであり、一般の従業員に対しては、更生申立て当日まで知らせていない。和解の締結は現場の社員や支配人が行ったものであり、故意に弁済時期を引き延ばしてはいない。和解金等の入金も申立直前まで滞りなく行っていた。

保全管理命令の個別通知は行っていない。(包括的禁止命令の個別通知は行っている)ホームページ、新聞報道によって告知している。コールセンターの不誠実な対応は改める。

 

G過払債権者代理人)一連か分断かの基準は? 訴訟上で一部債権を放棄した形で和解(和解に代わる決定)を締結した場合の債権届出額はどのようにすべきか?保全管理人代理)同じ口座で取引が分かれている場合は、分断期間の長短に関わらず、最大限過払債権者に有利な形で計算する。

小畑保全管理人)一連で過払い債権者に有利な計算を採用すると言っても、判決で分断として確定しているいる場合は、判決に基づいて認否を行う。判決には確定力があるため、判決で分断と判断された取引まで、一連計算とすることはできない。この点、判決を得た場合の方が不利に扱われる場合があるが、債権認否としてはやむを得ない。和解の場合、訴訟上の和解にも確定力があるため、和解で一部債権を放棄している場合であっても、放棄前の債権額に戻すことは債権認否をする上で認めることはできない。よって和解した金額で債権届出を行うことなる。和解条項に和解金の支払いに遅延があった場合は全額を支払う等の条項があれば尊重する。(どのように尊重するかは不明)

 

H 取引業者)更生債権が少額である場合、弁済について優遇するのか? 大幅に債権を放棄したとしても、少額債権の優遇はしないのか?

小畑保全管理人)社債総額は700億、顕在化している過払債権額が1900億と認識している。この他に潜在的な過払債権が加わる。本件手続きにおいては、債権者の大半が少額債権であるため、少額債権を優遇する資金の確保がむずかしいため、優遇はしない方向である。大幅に債権を放棄したとしても同様。

 

I一般債権者)権利変更を受けると、中小企業の経営が破綻状況にある場合に優先弁済を行ってもらえるのか? 一般債権者に関して通知も債権届出などの通知は行うのか?

小畑保全管理人)顕在化している債権者については一般債権者も含めて、自主的に債権届出書を送付する。過去に完済しており、現在取引関係がない潜在的な債権者については、通知は行わない。中小企業への優先弁済については個別に応対するので、問い合わせ頂きたい。

 

Jクレジット業者)今後クレジット業務は継続するのか?また、加盟店への支払いはどういう取扱いになるのか?

小畑保全管理人)継続するかどうかは、管財人の判断による。加盟店への支払いは、更生債権にあたるため、債権届出が必要。ただし、9月28日(申立日)以降のものについては、共益債権として100%返還する。

 

K 取引業者)店舗やATMの事業用賃貸借をしている場合、今後どうなるか? 賃貸借契約条項に賃借人の破産・会社更生に申立てによって解除する旨の記載があるが、この条項は判例上無効となるのか?

小畑保全管理人)解除条項は無効。賃貸借契約を今後継続するかは会社更生法(§61 双方未履行解除権)の定めに従い、管財人が更生開始決定後に判断する。継続するのであれば、賃料も支払っていく。

 

L過払債権者代理人)申立直前(9月14日)のSBIへの債権譲渡は資産流失にあたらないか?

小畑保全管理人)金融機関から借り入れが出来ない消費者金融の場合は、債権譲渡によって資金を得るのは通例のため、必ずしも直前期であったことだけでは違法であったとは言えない。評価額が妥当か、低廉譲渡でなはいか等を基準として、更生開始決定後調査判断されるものと思われる。保全管理人としては詐害性のある債権譲渡であったとは認識していない。

 

M過払債権者代理人)信用情報登録の取り扱いに関して、引き直し計算した結果、過払いとなったときの取り扱い、残債がのこるときで本人が取引履歴開示請求した場合の取り扱い、弁護士・司法書士が開示請求した場合の取り扱いはどうか?

小畑保全管理人)現段階で過払いであることが明らかであれば信用情報への登録は行わないが、現在引き直し計算中であるため、過払いの有無が未定の場合は一度、登録したのち、過払いであれば、撤回する。(本人がした場合の回答はなかった)武富士の行った引き直し結果に対しても調査を要する場合もあると思われるので、希望があれば武富士の引き直し計算書を送付するが、計算書の送付を請求したことによって信用情報に登録するといったことはしない。(本人から計算書の開示のみを求める場合は登録されないとの趣旨なのか?)