なぜ全国研修会でハンセン病の問題を取り上げるのか、疑問をもたれた方もいらっしゃるかもしれません。本研修会では、「人権」がメインテーマですが、人権問題と一口に言っても様々な範囲の問題があり、テーマを絞らないと散漫な議論になりがちです。そこで、人権問題を考えるにあたり、国家による重大な人権侵害であるハンセン病問題を取り上げ、この視点から人権擁護の問題について検討することといたしました。
ハンセン病の問題については、平成10年に、らい予防法違憲国賠訴訟が熊本地裁に起こされ、平成13年に勝訴、政府による控訴断念、となった経緯は大きなニュースとなりましたので、ある程度のことは、ご存知であろうかと思います。
ただ、ハンセン病の元患者さん達が、完治する薬が開発された後もなお、国の政策により、強制的に隔離され、施設に何十年間も収容され、施設の中では、強制労働、監禁、断種、堕胎などを強要されるなど、「人間」として享受すべき権利を奪われ、人権を侵害され続けてきた実態について、具体的に詳しくご存じの方は、あまりいらっしゃらないのではないかと思われます。
いずれにせよ、多くの司法書士にとって、これまでハンセン病の問題は、新聞やテレビといったメディアを通じて知る出来事であったといえるでしょう。
しかし、いつまでも「メディア」の中の出来事として済ませていてよいのでしょうか。
当日は、ハンセン病元患者の方や、弁護団の方に、被害の実態をはじめ、様々なお話を伺いながら、この問題に対して、私たちに何が出来るのか、何をやらなければいけないのかを考えると共に、ハンセン病問題を通じて、人権問題と司法書士の関わり、人権擁護の担い手としてのあるべき姿等を、みなさんと共に議論していきたいと考えています。
|