現在、進められている司法改革にジェンダーの視点が欠けているとの指摘がなされている。しかし、この指摘の声は、まだ小さい。
私たち全青司人権擁護委員会では、平成14年の福岡全国研修会において、DV問題を取り上げた分科会を担当し、DV(親しい男女間における男性から女性への暴力)問題の背景に、ジェンダーバイアス(社会的・歴史的に形成された男女の性差に基づく差別や偏見)があることを学んだ。
男女の生物学的性差をセックスと呼ぶのに対して、社会的・歴史的に形成された男女の性差をジェンダーと呼び、両者を呼び分けることはずいぶん認識されるようになってきたといっても良いだろうし、さらに最近では、セックスという男女を二次的に固定化すること自体がジェンダーだと捉える考え方も知られるようになってきている。
平成11年6月に施行された男女共同参画社会基本法の前文においても、「男女が互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、その性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現」を21世紀の緊急課題として位置づけられている。
しかし、このように基本法が施行され、緊急課題として取り上げられるようになったものの、司法の場に身をおく我々司法書士は、どの程度ジェンダーにとらわれず依頼者と向き合っているであろうか。
まわりに目を向けると、学者や司法関係者を発起人とするジェンダー法学会が立ち上がり、大学ではジェンダー法学に関する教育が将来の司法を担う学生に対して必須カリキュラムとして導入され始めている。
我々司法書士も、市民に身近な法律家として依頼者と向き合うとき、法律家として兼ね備えるべき資質として、まずは我々自身からジェンダーバイアスを一律排除することを目指した取り組みをなすべき時ではないだろうか。
そこで、本分科会において、「ジェンダー法学」をキーワードに、ジェンダーバイアスがいかに市民の法的救済を妨げるものであるか、司法改革においてジェンダーの視点を取り入れるべきであると指摘されているのはなぜかなど、活発に議論し、我々司法書士が真の法律家たりうるに取り組むべき課題を考え、意識を共有したい。
【内容】
1.ジェンダー法学会設立の経緯
2.司法関係者へのジェンダー法学教育の必要性
3.弁護士会内部の取り組み
4.司法書士はどう関わるか
1.DV・性暴力被害者に対する支援
2.法教育におけるジェンダーの視点
3.司法改革におけるジェンダーの視点
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